後遺症についての現在の情報

先日、報道でコロナ感染後の後遺症についての新しい知見が発表されました。

脳の萎縮 、 認知症の悪化 です。

 まず、脳の萎縮についてですが、これは3/7のNatureの論文によるものがあります。(Nature. 2022 Mar 07; doi: 10.1038/s41586-022-04569-5.)この論文は、51~81歳の785人のうち、401人のコロナ陽性者と384人の健常者のMRI変化を調べております。コロナ感染者は脳の前頭葉の嗅覚をつかさどる部分で感染後萎縮が生じるとともにその横の辺縁系にまで萎縮が広がっており、嗅覚神経の変性・退縮があったのではないかと考えられております。感染したことのある対象者の脳全体の大きさは、0.2~2%収縮していたとのこと。新型ウイルスの症状から回復した人でも、複雑な知能タスクをこなすのがむずかしいようです。感染者の認知機能は健常者と比較すると明らかに悪化したと報告されております。    確かに低酸素になることに加え直接ウイルスの感染にさらされればこのような結果も考えられますね。。しかし、この変化はもとに戻せるものなのかどうかは、まだ分かっていないようです。

 次に認知症の悪化についての論文です。これは3/8のJAMA の論文です。(JAMA neurology. 2022 Mar 08; doi: 10.1001/jamaneurol.2022.0461.)  平均年齢69歳で感染者1,438名を対象、平均年齢67歳の438名をコントロールにして、1年間の認知機能の推移を比較。その結果、軽度の認知機能低下を生じる危険性はCOVID-19の重篤群でオッズ比が4.87、非重篤群で1.71であった。重篤群では進行性認知機能低下を生じるオッズ比が19.0と極めて高かったとのこと。

これら2つの論文から、高齢者ではコロナ感染後、脳の萎縮に伴う認知症の悪化がかなり進行することが心配されます。 脳の萎縮を誘発するコロナの後遺症は認知症の悪化を加速度的に進めてしまうものと思われます。   2022.4.22