オミクロン株、わかってきたこと

オミクロン株、わかってきたこと

ファイザー製コロナワクチンBNT162b2のオミクロン株におけるコロナ発症予防効果が英国から報告(UKHSA publications gateway number GOV-10645.)されています。  コロナワクチン接種後24週間後にはワクチンによるコロナ発症予防効果がデルタ株においては約60%程度まで低下してしまうが、オミクロン株では約40%程度にまでさらに低下してしまうことが示されています。ただし、ワクチンのブースター接種により約80%にまで回復しています。

オミクロン株は今までの変異株に較べ多彩な遺伝子変異を有することが判明しており、ウイルス全長での遺伝子変異は45~52個、S蛋白での遺伝子変異は26~32個と想定されています(WHO Enhancing Readiness for Omicron. 2021年11月28日)。これらの変異の結果、オミクロン株の感染性/播種性はDelta株を含めた従来の変異株を上回ります。研究者によってはデルタ株とはあまりにも違いすぎるのでデルタ株が変異したものではなく全く違うコロナウイルスから変異したてものではないかと考える人もいます。

 コロナ感染症の重症化(入院/死亡)は主としてCD8-T細胞に由来する細胞性免疫の賦活によって規定されます(Karim SSA, et al. Lancet. 2021;398:2126-2128.)。細胞性免疫は液性免疫とは異なり変異株の種類によらず少なくとも8ヵ月以上は維持されるとの報告があります(Barouch DH, et al. N Engl J Med. 2021;385:951-953.)。そのため、オミクロン株感染においても有意な細胞性免疫回避は発生せず重症化が従来の変異株感染時を大きく上回ることはない、といえそうです。しかし、福島県立医科大学の報告(2500人の追跡調査)では抗体価は6か月でかなり低下してくる人がいるようです。

平たく言えば、オミクロン株のスパイクタンパク質には多くの変異が見つかっていますが、スパイクタンパク質自体には100カ所ぐらいに免疫の目印があります。そのうちの、20~30個の目印の変異があっても、残りの目印が残っていれば免疫は十分に認識してくれますので、従来のワクチンでもしっかり効くと考えられます。(遺伝子変異の数が多いオミクロン株(45~52ヵ所)でもCD8-T細胞反応を惹起するEpitopeの78%は維持されているとの報告もあります(Pfizer and BioNTech. BUSINESS WIRE 2021年12月8日))。

まとめると

「接種したあと時間がたつと液性免疫(抗体価)は多少低下するけれど、細胞性免疫はほどほどのこるようです。でもそれぞれ低下することは確実なので追加接種したほうがいいですよ」という結論です。(今のところ)

 

以上から、やはりブースター接種はしたほうがいいと考えられます。副反応がひどかった方はスパイクたんぱくの抗体価を調べてみてから接種を決める方法も考えられます。  また、今回はオミクロン株の後遺症の情報がほとんどないので触れませんでしたが、後遺症の問題があります。デルタ株ではご存じの通り、味覚障害、脱毛が半年たっても続いている方が数多くいるようです。オミクロン株ではどうなるのでしょうか?   まだ油断できません。

 2021.12.25