インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチン

新型コロナのページでも書きましたが、現在の南半球の流行状態を見ると、本邦では今年はインフルエンザは流行しない可能性が高いと考えております。しかし、私はインフルエンザワクチンを打つつもりです。理由は

1 可能性が低いといっても 0 ではないので、立場上予防するに越したことはない。また、熱帯・亜熱帯地方ではわずかながらも変異しながら存在していること。中国で多数検出されていること。

2 今年は役に立たなくても来年以降役に立つ可能性があること。

 

1について、WHOの最近の集計です。2021年第1週から第35週までのデータですが、これを見ると オーストラリアでは3件しか出ていませんが、中国7391件、ラオス146件、フィリピン48件、ベトナム39件、とコロナが席巻しているにもかかわらずほどほど出ているのがわかります。

Country: (most recent week of report)Total number of specimens processed :Total number of influenza positive specimens

Australia   (34)   65488   3
Cambodia  (32)    3208   0
China       (34)      426304   7391
Fiji                 (4)           222
Japan           (33)                4
Lao People’s Democratic Republic  (35)    2105    146
Malaysia      (33)         2073        2
Mongolia     (31)          306        0
New Caledonia
New Zealand
Papua New Guinea
Philippines   (32)           391      48
Republic of Korea
Singapore   (34)          1897       1
Viet Nam     (30)           497     39

これらから、中国が突出して多いのがわかります。今後も注意深く見ていく必要があります。日本では4例の報告がある、ということですね。オーストラリアではほとんど発生しておりませんが、熱帯地方や中国では結構発生していますね。

2についてです。  「ワクチン接種後の高齢者におけるインフルエンザ抗体価の推移(19971999)」The Transition of Influenza Antibody in the Elderly Who Inoculated the Vaccine(1997-1999) (東京衛研年報Ann. Rep. Tokyo Metr. Res. Lab. P.H., 51, 1419, 2000)という論文があります。2シーズンにわたり抗体価の推移を調べた論文です。結論としては、「毎年のワクチン接種によりワクチン効果が妨げられるとの報告もあるが,すべての株で明らかなように,199798年シーズンと199899シーズンのワクチン接種前での抗体価を比較すると,前シーズンの獲得抗体が低下しながらも残存していることが認められる。さらにワクチン接種をすることで抗体価は再び上昇し,抗体保有率はさらに上昇する」 という結果が得られたとのことです。   経験的にも、毎年ワクチンを打っている高齢者はインフルエンザにかかりにくく、ワクチンが「外れた」年でも、罹っても軽く済んでいる理由がわかる気がします。そうした理由で今年打つワクチンが去年までに打ったワクチンの効果を刺激しつつ、来年にもつながるかもしれない、と思うのです。   2021.9.14